フライトジャケットに付いている赤色のリボンについて
今日は久しぶりに服を買いに街へ出た。
秋モノを買おうと思って家を出たけど、最近は朝晩が本格的に冷えてきたので思い切って冬物のアウターを買うことにした。
そこで目についたのがこのジャケットだ。
MA-1で有名なアルファ・インダストリーズのフライトジャケットだ。
MA-1に似ているけど、こちらはフードや襟が付いていて丈が少し長い。
重みのあるシルエットが気に入ったので迷うこともなく購入を決めた。
店員さんがサイズ合わせに付き合ってくれたので「このジャケット、カッコいいですね」と言ったら「この商品は間違いなく売れますよ!」と自信あり気に答えてくれた。
その理由は単純で、“実は毎年売れてます” だそうだ。
そんな雑談ついでに、なんとなく前から気になっていた事を聞いてみた。
それが今回の記事の主題である“フライトジャケットに付いている赤色のリボンについて”だ。
「このリボンって何か意味ある物なんですか?」という僕に質問に店員さんはこう答えた。
「昔は戦闘機のパイロットが基地から発進する時にこのリボンを外して、基地へ帰還した時にまたリボンを付けたそうです。出撃の目印みたいなものですかねぇ。」
この話を聞いた瞬間、自分の中でなんとなくリボンの正体が解った気がした。
こちらから変な質問をしておいて申し訳ないがきっとこの店員さんの話は間違っている。
家に帰ってから赤のリボンについてネットで調べてみると一瞬でその正体が明らかになった。やっぱすげぇよ、インターネットは。
どうやらアルファ・インダストリーズのフライトジャケットにはかなり前から赤色のリボンが付いていたようだ。
しかし、今と以前では少しリボンのデザインに変化がある事がわかった。
僕の買ったジャケットのリボンには「ALPHA INDUSTRIES」と書かれているが、以前までリボンに書かれていた文字は「REMOVE BEFORE FLIHT」だったそうだ。
“REMOVE BEFORE FLIHT(飛行前に外す)”
これは整備が完了した航空機のセンサーなどに付ける注意書きのフラッグに書かれている言葉だ。
何故僕がそんな事を知っているのかというと、この注意書きのフラッグ、実は仕事の取引先が自衛隊向けに販売している製品なのだ。
ちなみに実物は長さが50cmくらいあるのでジャケットのアクセサリーにする事は出来ない。
つまり、フライトジャケットの赤色リボンの正体は航空機の注意書きフラッグをモチーフした物だったのだ。
きっと、ミリタリーアパレルを販売するアルファ・インダストリーズはフライトジャケットに色やデザインに加えて更になにかファンを刺激できるテイストを盛り込めないかと考えたんだろう。
そうして生まれたのが注意書きフラッグをモチーフにしたリボンストラップだったのだ。※あくまで想像です
リボンの正体がわかってすっきりしたが、同時に店員さんの事が頭をよぎった。
よく考えたら店員さんの話はパイロットがリボンを付け外しするという部分以外は概ね当たっているのだ。
注意書きフラッグは飛行前に確実に機体から外されるが、飛行から戻って基地で整備が完了するとまた機体へ装着される。
店員さんがリボンの意味を間違って覚えていただけなのか、それとも店員さんにリボンの意味を教えた人がすでに間違えて覚えていたのかはわからない。
ただ、きっと話の元を辿って行くとリボンの真実を知っている人が居るんだろう。
もしかしたら最後に待っているのは凄腕の戦闘機パイロットかもしれないし、ベテラン整備士かもしれない。
出処のわからない伝言ゲームのルートを妄想して過ごした土曜日だった。
10年前からファンだった声優が結婚した時、
7月7日の昼だった。
昼食の弁当の蓋をあけて、冷えて少し強張った白米に箸を突き立てる。
いつもと同じ、少し孤独で、気持ちの落ち着く一人だけの昼食だ。
これもいつも通り。
変わらない日常から一つだけ違ったのは、Twitterの画面を更新した時に水樹奈々オフィシャルアカウントのツイートが目に入ったことだ。
ツイートにぶら下がっていたブログのリンクを開く前に、その時が来たんだと予想できた。
ブログに書かれていた内容は予想通り、結婚報告だった。
それを目の当たりにした時の自分の感情は今はもう正確には思い出せない。
大好きなアイドル声優の結婚にショックを受けて絶望したってわけでもなく、それでいて無関心でもなかった。
唯一間違いないのは、諸手を挙げて祝福していた訳じゃないって事だ。
前からネットには“本当のファンなら推しの結婚は祝福するべき”という意見が支持を得ていて、逆に発狂したり闇落ちしてアンチ化するのはナンセンスな雰囲気がある。
だが、俺としては推しが結婚したら取り敢えず落ち込んで発狂するのは古き良きオタクの様式美として残しておくべき文化だと思うのだ。
という訳で俺も発狂してメンヘラポエムの一つでも書き上げようかと思ったんだが、上にも書いたように然程ショックでもなく、かと言っておめでたいと喜べるほど素直でもなかったためメンヘラポエムを書くほどの熱量がなかった。
数年前の俺は間違いなく水樹奈々にガチ恋していたんだけど、今回の結婚報告でいつの間にか自分が只の平凡なファンになっていた事に今更気づいてしまったのだ。
そういえば、スマイルギャングやMの世界を毎週聴くのもやめていた。
何年か前まではそれこそ毎日、水樹奈々の情報を集めるのが生活の一部になっていて、ラジオを聞き逃したら次の日はニコニコ動画に転載があがるのを待っていたりしていたのに。
自分でも気づかないうちに少しずつ水樹奈々は俺の生活の中から抜け落ちていき、そして今ではこのザマだ。
きっと理由は色々あるけど、それを分析したところで意味はない。
ただ、かつてに比べて腑抜けたとは言え俺は間違いなく今でも水樹奈々のファンだ。
奈々さんの演じるキャラクターが好きだし、奈々さんの歌う歌が好きだ。
奈々さんのライブほど楽しく盛り上がれるコンテンツに今後の人生で出会える気が全くしない。
ファンだ。
ファンなのだ。
ファンであるならば、祝福しなくてはいけない。
ファンとしてあるべき姿を示すことでしか、ファンであると証明し得ない。
水樹奈々さん、ご結婚……
おめでt
あああああああああっ!!!!!!!!!
嫌だ!!!!!
嘘だ!!!!!!!
結婚なんて嘘だ!!!!!!!!!!
認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない!!!!!
引退するまで結婚しないって言ってたじゃないか!!!!(※言ってません)
10年間ずっと応援してきたのに、俺を置いていくのか……
俺が顔も知らない男の物になってしまうのか……
奈々さんのために使った俺の時間は、お金は何だったんだ。
いつかこんな日が来るのが怖かった。
奈々さんが躍進していく姿を応援することで自分も一緒に成長しているような幻想を抱いて、それを真実だって思い込んで生きてきた。
でもそれが夢だって現実を叩きつけられる日が来ることはわかっていたんだ。
でも、ずっとずっと目を背け続けていた。
10年間追い続けてきた幻想の光が消えるときが来てしまったんだ。
今日から何を目指して生きればいいんだ、誰が俺を照らしてくれるんだよ……
何もない、何も残ってない。
この10年間で同世代の奴らが築いて来た物を、俺は何も持っていないんだ。
あるのは無数のペンライトとライブTシャツだけだよ……
奈々さん、行かないで……
俺の希望の光のままで居てくれ……
とまぁこんな感じで僕なりの“様式美”とします。
水樹奈々さん、ご結婚本当におめでとうございます!
奈々さんがよくおばぁちゃんになっても歌を歌いたいって言ってたので、僕はおじいちゃんになってもずっとずっとファンです。
以上、推しが結婚したときのケジメの一筆でした!
以前勤めていた会社の人事部長に会った話
今日は休日。
10時過ぎに起きて録画した深夜アニメを流しながら朝飯を食べる。
実に優雅。
アニメと食事が終わったらスポーツジムへ。
偶然職場の同僚も来ていたので軽く談笑。仕事の事を少し話しただけだけど、ジムに知り合いが居るとなんとなく普段よりヤル気が出る。
ジムのあとは床屋へ向かった。美容院ではなく床屋である。
駐車場には車が3台停まっていた。開店して2年くらいのまだ新しいお店だけど僕が行く時間帯にこんなに人が入っているのは初めてだ。
店内のベンチに座って自分の順番が来るのを待っていると新しいお客さんが入ってきた。
このお店にはおっさんと小学生と俺くらいしか来ないと思っていたけど、その時入ってきたのはコートを羽織ったオシャレなオジサマ。
視線に気づいたのかオジサマも僕の方へと振り返る。次の瞬間、お互いに「おっ!」と声が出た。
なんとこのオシャレなオジサマ、前に僕が働いていた会社の人事部長だったのだ。
まだ自分の散髪の順番は回ってこないし、待ち合いエリアのベンチは僕の隣しか空いていなかったので必然的に人事部長と何か話さないといけない空間が出来上がってしまった。
在職中に特別よく話をする仲ではなかったし、僕はいきなり出社するのをやめて数日音信不通になったあといきなり退職宣言をして会社を去ったのでめちゃくちゃ気まずい。
退職するときはもう会社の人間とは一生会わないと思っていたけどまさか床屋で出会ってしまうなんて、ケチらず美容院に通うべきだった。
何を話すべきかと頭の中で必死に話題を検索していると相手の方が先に喋り始めた。
「会社は来春からちょっと厳しいかも」
「かつての同僚はみんな元気に働いているよ」
「○○君は結婚したよ。同僚だった△△さんは今は係長になっているんだ。」
流石は人を見るプロ、人事部長だ。
僕はキョドって「マジっすか」しか返事が出来ないのに全く話題が途切れない。
そのうちに、ぎこちないながらも会話が進んでいくうちに少しずつ緊張が解けていくのを感じた。
よく考えたら僕らはもう上司と部下の関係ではなくて、顔見知りの一般人同士だ。
歳上としての最低限の敬いがあれば他に気を使う必要ないので、思い切って僕は転職して正解だったという話をできるだけやんわりと伝えてみた。
すると意外にも人事部長は「転職はどんどんするべき」という意見の持ち主だった。
彼の話は長かったけど、要約すると「自分に合わないと感じる所でダラダラ惰性で働くのは人生が勿体ない」という内容だった。
僕は会社を辞めるときに先の事を何も考えていなかった。
ただ思いつきで人生のレールを別の路線に切り替えたくなったというだけだ。
でも無職の期間で色々な事を感じて、ネット越しだけど色んな人と交流していくうちになんとなくだけど次に自分が向かう先を見つけた気がした。
そうして目的意識を持って選んだ今の仕事には以前の仕事には無かったプライドを感じている。
リアルの知り合いもネットで見かける何処かの誰かも「退職したい」と言いながら辛そうに働いている様子が伺える。
我慢していればいつか報われるわけでもないし、待っていれば誰かが環境を変えてくれるわけでもないのに、まるで助けを求めているように嘆いている。
人事部長は長い職歴の中できっと僕よりもずっと多くのそういう人達を見てきているはずだ。でも、きっと立場上そういう人が社内に居ても「もう辞めて良いんだよ」なんて言えなかっただろう。
まぁこれは完全に僕の思い込みだけど、そんな事を考えなら改めて彼を見たらこの人は物凄く苦悩した末に今を生きているのかもしれないと、少し尊敬の気持ちが湧いてきた。
余談だけど美容師さんは僕の髪の毛が少なすぎてカットの仕方に迷っている様子だった。なんかすみません……
掴んだ虹は声優の色をしていた。<水瀬いのりライブツアー Catch the Rainbow! 感想>
水瀬いのりライブツアー、Catch the Rainbow!の愛知公演と東京公演を観覧してきたのでその感想を書いていこう。
愛知はフォレストホール、東京は日本武道館。
どちらの公演もとても素敵な時間だったけれど、千秋楽ということもあって今日の武道館公演は会場のファンもいのりちゃん自身にもより一層の熱が入っていたような印象だ。
ライブ開始予定時刻の17時を4分ほど過ぎた時、会場の照明が落ち、ステージのスクリーンには光が灯った。
10、9、8…とカウントダウンをするいのりちゃんの姿がスクリーンに映し出されると会場のファンもそれに呼応してカウントダウンの数字を叫ぶ。
『......3......2......1!!』
先週も別会場で同じ光景を見ていた僕はこのあと何が起こるのかを知っている。
知っているのに、ワクワクした気持ちが止まらない。湧き上がる高揚感を抑えられない。
何度味わっても飽きないちょっと怖いぐらいに魅惑的な時間が今日も始まるのだ。
軽快なイントロで始まった1曲目は「Step Up!」
疾走感のあるメロディと障害を乗り越え次のステージへと進む事を促す前向きな歌詞が印象的なライブの1発目に持ってくるには相応しい曲だ。
いのりちゃんの赤いドレスの華やかさもあって一気に会場はヒートアップした。
その後MCを挟むこと無く2曲目の「ピュアフレーム」を歌いきり、3曲目にタオル曲の「Ready Steady Go!」と続いた。
いのりちゃん本人も含めた会場全体でタオルを回しながらハイテンポな歌詞の中に観客のコールを挟んで完成するReady Steady Go!はライブのレギュラー曲だ。
ライブの醍醐味の一つでもある“会場の一体感”を全身で楽しめるのがこの曲の持ち味。
財布を無くした日もスマホをトイレに落とした日だってReady Steady Go!をライブ会場で味わえば笑顔になれる事間違いなし。
MCを挟んで4曲目、「Kitty Cat Adventure」
個人的に今回のライブツアーのMVPはKitty Cat Adventureだ。
別に最優秀賞でも審査員特別賞でも良いがとにかくファンに一番の衝撃を与え最も視線を釘付けにしたのは間違いなくこの曲のはずだ。
タイトルの通り“子猫”をテーマにした甘い歌詞の曲なのだけれど、そんな事はどうでもよくてとにかくダンスが可愛い。
リズムに合わせて猫の仕草を真似たくねくねした振り付けをするいのりちゃんがそれはもうひたすらに可愛い。
あのダンスを見ればきっと犬派の人は猫派になるし猫派の人は水瀬いのり推しになる。
今日はG20サミットで各国の代表が日本を訪れていたが、今日彼らが見るべきは会議の書類や通訳の顔よりもKitty Cat Adventureを踊る水瀬いのりだったのかもしれない。
あの振り付けを考えたのは一体何者なんだ。
あまりにも的確にファンの急所を突きすぎていて怖いぞ。
バンド紹介やMCを挟みながら「Wonder Caravan!」、「約束のアステリズム」、「TRUST IN ETERNITY」など最新アルバムの収録曲を中心にライブは進行した。
今回のツアーのセットリストは楽曲の雰囲気で明確にパート分けがされていたのが印象的だ。
ざっくり言えばよくある「盛り上がる曲→キュート系の曲→バラード→終盤の飛び曲」といった分け方だったけれど、衣装替えやMCを区切りとして意図的にパートチェンジを明確化していたように感じた。
恐らくCatch the Rainbow!というタイトルにちなんで曲のカラーをはっきりとさせてセットリストで虹色のカラフルさを演出していたのかな。
特別なにか企画を交えない限りはライブイベントの構成はアーティストが歌う→喋る→歌うの繰り返しだ。
人によっては途中でバンド紹介やイメージ映像を流したりするが、回数を重ねればどうしてもマンネリ化してしまう。
そのため当然運営側はライブの度にファンを飽きさせない施策を講じてくるのだが、僕はそれが毎回楽しみでしかたない。
今回で言えばまずは上に書いた「Kitty Cat Adventure」での可愛いダンスやセットリストを使った演出。
他には過去に着てこなかったパンツスタイルのライブ衣装、中盤での12人構成の豪華なストリングスメンバーの追加などがあった。
一つ一つ振り返って考えるとそこには「ファンを驚かせてやる!」という運営の熱意が感じられる。
そしてその熱意はしっかりファンに伝わっていると思う。
さっきライブが終わって帰ってきたのに、次のライブでは水瀬いのり(とその運営)は僕にどんな体験をさせてくれるんだろうと新たに期待してしまっているのがその証拠だ。
武道館の周りにはたくさんのファンがいた。
近くのコンビニにはありえないくらい大量のキリンレモンが売っていて、水色のTシャツを着た人たちが次々にそのキリンレモンを買っていく。
駐車場に停まっている車のナンバープレートには様々な地名が書いてあって何の法則性もない。
今日僕の視界に映った人や物はすべてが一人の人間とその人間が作り出す空間を見るために動いていた。
その事に素直に感動している自分に気づいて、いのりちゃんのオタクやっててよかったぁ~♪と思えたのも今日の良かった点だ。
とりあえず"KANA-DERO"を見て生まれた感情を吐き出したいだけの記事
先日、『Kaede Higuchi 1st Live "KANA-DERO"』が開催された。
僕は残念ながら当日は現地に行くこともリアルタイムで生中継を見ることも叶わなかったのでニコニコのタイムシフトで先程全編を見終えたところだ。
その内容はあまりにも、あまりにもエモーショナルなライブイベントだった。
一部と二部のトータルでも2時間に満たないライブ。
しかしその短い時間の中で樋口楓、そしてゲストのにじさんじメンバー達が僕へ刻み込んだ物は5時間超の大規模フェスイベントにだって引けを取らない物だった。
だからこの記事はライブレポートのような書き方はせず、僕の中に生じた感情を言語化することに努めたいと思う。
あらかじめ前提として示しておくが、僕は樋口楓さん及びにじさんじグループの熱烈なファンというわけではない。
にじさんじ1期生がデビューした当初から他に見たい配信が無ければ見る、見逃した中に話題性の高い配信があればアーカイブを再生するという程度のライトなファンだ。
そんな僕にもこれだけの感動を与えたのだから、きっと本当に熱心な樋口楓さんのファンたちは感無量だろう。
積み重ねてきた時間が感動へと直結したステージ
今回のライブはデビュー以来、樋口楓さんが積み重ねてきた物の集大成だったと思う。
配信者として活動する中で生まれたファンだけに伝わるネタ、他のにじさんじメンバーとの関係性、歌ってみた動画で支持を得た歌唱力など、最初から緻密に計算されていたかのように今までの彼女の全てがこのライブへ紐づけできるように感じるからだ。
しかし逆に、いつかの雑談配信で「マビノギを広めるためにVtuberになった(要約)」と言っていた彼女とステージに立っている彼女が地続きの歴史の上に居るというのがライブを見終わった今でもまだ現実味がない。
みるみるチャンネル登録数が増え、色んなプラットフォームで配信活動をし、にじさんじ外の人達ともコラボ活動をするようになっても樋口楓というVtuberは常に等身大の女子高生だった。
そんな彼女がステージ上で多くの人の視線の中心に立っているという現実に僕の理解が追いつかない。
普通の女子高生を1年もしない期間でそんなカリスマに育て上げてしまうVtuberの世界にはただただ驚かされるばかりだ。
ライブの中で特に樋口楓さんを見てきて良かったと強く感じた場面があった。
『命に嫌われている。』のイントロが流れ始めると、それに被せるようにゲスト出演していた月ノ美兎さんのセリフが流れたのだ。
「そう私ね、死んだらどうなるのかっていうのすっごく気になってるんですよ。意識がなくなるのがすっごい怖いんですよ。寝てる時みたいな感じじゃないですか、それがね、続くっていうのがちょっとわからないですね」
これを聴いた時、僕の身体の奥からブワッと熱が湧いてきた。
あぁぁあっ!これ!!!!
すっげぇ前の!!すっげぇ前の雑談にゲストで委員長が来た時のやつ!!!
ああっ!!すっげえぇ!!!!すっげぇの持ってきたコイツら!!!!!
セリフで完全にやられた。
心を覆っていた最後の薄皮をズタズタに切り裂かれてむき出しにされたような気がした。
こうなったらもう全てが心に突き刺さる。
『命に嫌われいる。』の切ない歌詞が刺さる。
感情の入ったでろーんと委員長の歌声が刺さる。
会場の雰囲気が刺さる。
ニコニコのコメントが刺さる。
そして更に、極めつけのダメ押しとも言える光景が最後に待っていた。
曲が終わりに差し掛かりアウトロが流れ始めた時、月ノ美兎さんが退場前の口上を述べた後で一瞬だけ間をおいて樋口楓さんの名を呼んだ。
そして一言、「ありがとう」と告げてステージからはけたのだ。
それを聞いた樋口楓さんは言葉を失っている様に見えた。
「ありがとう」に込められたたくさんの思いを噛みしめて、今にも泣き出しそうになっているように見えた。
3Dモデルが表現できる顔の表情パターンは少なく、当然涙が流れるような機能は備わっていない。
それでも僕には彼女が感情の波に揺さぶられてるように見えたんだ。
ネタ抜きに人生で初めてニコニコ動画の画面を見ながら涙が零れた瞬間だった。
※件のセリフを言っていた配信
“今”のコンテンツは“今”楽しむべき
最後の曲を歌っている時、彼女は少し気になる事を言っていた。
「いつかお別れの日は来るかもしれないけど、もしそんな日が来てしまっても私の心とか魂はみんなのことをわすれないから安心して」
とても良いメッセージだと思った。
多くのアイドルやアーテストは自分たちとファンの関係性が有限であることを意識させようとはしないものだ。
普通ならここは「いつまでも付いてきて来てくれ」だとか「まだまだ終わりじゃない」とか言ってファンに永遠の幻想を与えるシーンだ。
でも彼女は、自分自身が有限の存在である事をあえて示唆した。
その上で“今”を一緒に楽しもうとファンに語ってくれたというのがとても愛おしく感じられた。
Vtuberブームは一時的な物かもしれないし、ブームが続いたとしても2019年は去年を超える盛り上がりを見せることは無いかもしれない。
確実なのは今この瞬間はブームは最高に盛り上がっているし、僕自信がVtuber達の活躍を見るのを最高に楽しめていると言うことだ。
お気に入りのVtuberを見るために一日中パソコンに張り付いているのも、リアルイベントのために遠くまで足を運ぶのもとても楽しい充実した時間だ。
限りある幸せな日々を、心から大切にしたいと思わせてくれた素晴らしいライブだった。
みんなで有栖川ドットの世界に参加しよう!
12日の深夜、以前から動画投稿を行っていたVtuberの有栖川ドットさんが初配信を行ったのだがその内容があまりにも斬新かつ画期的だったので紹介したいと思う。
“有栖川ドット”とは
有栖川ドットさんは2018年3月から活動しているVtuberだ。
多くのVtuberは3Dモデル、Live2Dを使用して活動しているが彼女の身体はその名の通りドット絵で形作られているのが特徴だ。
本人と同じくドット絵で作られた世界を冒険する動画を投稿しており、その多くが名作ゲームのパロディになっている。
元ネタになっているゲームを知っている人はついニヤっとしてしまう事間違いなしだ。
パロディ要素以外にもドット絵を生かした独創的な表現やコミカルなネタの仕込みも彼女の動画の見どころだと思う。
オススメはドットちゃんがス○ラトゥーンの世界へ冒険に行く動画。
元々3Dゲームであるス○ラトゥーンの世界をドット絵で忠実に再現しているという力作だ。
エンドカットのパリピの雰囲気に染まったドットさんの姿もとても可愛いので見どころだ。
独特な世界観と高い技術力が話題になり、更にはぽんぽこ24ではCM大賞に選ばれた事もあって動画投稿のみで活動するVtuberの中では現在チャンネル登録数9600以上と一際多い。
きっとそんな彼女の初配信には多くのVtuberファンが期待を寄せていただろう。
配信内容以前にそもそもドット絵の彼女がどんなスタイルで配信活動を行うのかと疑問を抱いていたファンも多かったはずだ。
しかし有栖川ドットはそんな“期待”や“疑問”を“驚き”へ塗り替えて見せたのだ。
ほかの誰にも出来ない“有栖川ドット”だけの生配信
現在多く人の認識ではVtuberの生配信といえば画面横に配信者のモデルがあり、画面中央に様々なコンテンツを表示して視聴者のコメントを拾いながらトークを広げるスタイルが一般的だろう。
3Dモデルを仕様している人もバストアップを映して同様のスタイルで配信している人が多い。
しかし有栖川ドットさんが画面に映したのはゲーム画面のみだった。
だがただのゲームではない。
デカデカと表示されている『有栖川ドットの冒険(テスト)』というタイトルと画面の端でピョコピョコ動く小さなドットさんの姿を見れば誰でもこれが本人制作のオリジナルゲームの画面だと気づく。
そう、つまりこれはゲームのプレイ配信ではなく“有栖川ドットの居る世界”を配信しているのだ。
初投稿からの長い期間、動画を通して彼女が生み出し視聴者へ伝えてきたドット絵の世界で生活し冒険を繰り広げるVtuber有栖川ドットの世界観をそのまま生配信で表現してみせたという事に僕は衝撃と感動を覚えた。
これほど投稿した動画と生放送を地続きのコンテンツとして扱える配信者は今現在彼女以外には存在しないのではないだうか。
配信画面を開いただけで充分に斬新で刺激的なのだが、彼女が生み出す驚きにはまだまだ先があった。
視聴者が介入し、冒険を助ける「協力プレイ」
配信を見ていると不規則に大量のコインが落下してくる場面が多くあった。
2Dゲームでコース上にコインなどのアイテムががあるのはよく見る光景なので、はじめのうちは多くの視聴者がこれはゲーム内の設置アイテムだろうと思い込み特別な違和感を覚える事は無かっただろう。
しかし配信を見ているうちにコインの落下には法則性があること一部の視聴者が気づき始めたのだ。
コインの落下タイミングの答え、それは視聴者が送る“スーパーチャット”だった。
YouTubeでのいわゆる“投げ銭”機能であるスーパーチャット、視聴者からこれを送られた時にドットちゃんにコインとして直接届けられる仕様になっていたのだ。
視聴者のコメントが反映されるのはスーパーチャットだけではなかった。
ドットちゃんの冒険中に視聴者の誰かが【みかん】とコメントに入力すると、なんとゲーム内にみかんが出現したのだ。
そしてなんと、そのみかんをゲーム内のドットさんが取得すると敵との接触で減ってしまったライフポイントが回復するではないか。
このシステムに気づいた視聴者はドットちゃんがピンチになると次々と【みかん】と入力していった。
視聴者とドットさんの協力プレイが成立し始めたのだ。
冒険が少し進むと「なんかピザも食べたくなってきました」とドットさんがつぶやいた。
どうやらフルーツだけでは満足出来なかったらしい。
これを聞いた勘の良い視聴者はすぐさまコメントに【ピザ】と打ち込んでいく。
すると予想通りコメントのピザはゲーム内アイテムと成って次々にドットさんの元へ届いだのだった。
暫くして「もっとブロックがあれば楽に進めると思うのですが」とドットちゃんが発言した時にはもう殆どの視聴者がコメントによるギフトシステムに気づいていた。
みんな我先にと【ブロック】と入力していくものだからドットちゃんの助けに成るはずがブロックだらけで逆に進行妨害になってしまうという微笑ましいゲーム展開が生まれたのだが、これはリアルタイムだからこそ生まれたこの配信でしか見ることの出来ない光景だろう。
実は視聴者に見るだけではなく投げ銭やコメントを通して配信に参加するという選択肢を与えるシステム自体には多くの先駆者が居る。
有料のギフトアイテムが配信者に届くというシステムは東雲めぐさんなどが、コメントに特定のワードを入力すると配信内にアイテムとして出現するシステムはアズマリムさん、最近では姫鶴沙雪さんなどが行っている。
誰でも3Dアバターで配信を行えるバーチャルキャストではTwitterの呟きや画像を配信内に取り込む事も可能になっている。
そんな現在でも有栖川ドットさんのこのシステムに大きな衝撃を受けるのは、まず個人でこのシステムを実現しているというアイディアと技術力に驚かされるから。
そして有栖川ドットさんの配信にはストーリー性があり、視聴者との協力関係を生み出しているというのが大きと思う。
送ったアイテムを配信者に触ってもらえたりそのアイテムに対してリアクションを貰えるというのも十分凄い事なのだが、有栖川ドットさんの場合はゴールを目指すドットちゃんを助けステージの先に進めるという別の楽しみがある。
更に今回のブロックで起きたような視聴者の送ったアイテムが生み出す台本通りにならないゲーム展開も見どころだ。
次回はみんなも参加しよう!
色々と書いたが、僕が伝えたいことは事はとても単純だ。
有栖川ドットさんの配信はめちゃくちゃ面白い!そして楽しい!
これが全てだ。
これだけ伝わったらそれで良い。
今回のテスト配信では残念ながらドットさんは目的地へ到達することが出来なかった。
次回の配信でも同じ内容の冒険を行うとの事なので、今回リアルタイムで見ていなかったという人は是非次回の配信を視聴してドットさんの冒険の手助けをしよう!
※記事中で名前を出したVtuberの方々のチャンネル
※過去に紹介記事を書いているのでこちらも見てね!
Kizuna AI 1st Live “hello, world”が忘れられない
今回はズバリ、親分ことバーチャルYouTuberキズナアイちゃんの記念すべき1stライブ、『Kizuna AI 1st Live “hello, world”』がとても素晴らしかったという内容の記事だ。
ライブ直後は色々と年末イベントが重なって記事を書く時間が取れなかったので、ずいぶん遅いライブレポートになってしまった。
しかしこのライブ、なんとニコニコ生放送のタイムシフトで何度でも見返すことが出来たのだ。
おかげで公演から時間が経ったからといってライブの内容を忘れてしまったりすることなく、いつでもライブ直後のような新鮮な気持ちで記事を書くことが出来る。ニコニコ動画ありがとうっ!
僕は今回のライブが決まって9週連続シングルリリースが始まるまではキズナアイというVtuberを歌手としては認識していなかった。アイちゃんを知ってから見漁った過去の投稿動画には“歌ってみた動画”もいくつかあったし、ニコニコ超会議のライブ出演もしっかりと見ていたのだけど、Vtuberとしての活動の中に歌も含まれているだけという認識だった。
ところが一週間ごとに解禁されていく曲はどれも可愛くてキャッチーなアイドル曲ではなく、エレクトリカルでラップを含んでいたりアップテンポなダンスナンバーだったりとクラブミュージック感の強いものが多かった。
今までのアイちゃんのイメージから想像できない楽曲に少し戸惑いを感じていたし、「こんな“今風”な楽曲がオタクにウケるのか!?」とちょっと失礼な疑問も感じたのが正直なところだ。
ただしそれは最初だけ。9曲どれも聴けば聴くほど胸の奥から感情が湧き上がってくるのを感じるようになった。きっと歌手としてのキズナアイのイメージがリリースされた9曲で新たに具体化されたんだ思う。気づけば僕は“アーティスト・キズナアイ”に魅了されきっていた。
「彼女が作るライブの空気はどんな物になるだろう。それを見た自分の感情はどんな風に揺れ動くのだろう。」そんな期待を抱きながら待ち焦がれたライブだった。
入場前に凍死するんじゃないかと思うほど寒いお台場で待機列に並ぶこと数十分、僕が入場した時には既にライブの前座としてDJがフロアを思いっきり盛り上げていた。
アイちゃんの“お着替え”が少し手間取ったらしく15分ほど遅れてライブがスタート、1曲目は『Hello,Morning』だ。
登場したアイちゃんはライブ用の新衣装でとても可愛い!
ダンスに合わせてふわりふわりと揺れるスカートがとてもステージ映えしていた。
今回のライブはアイちゃんが数曲歌うと間にDJタイムが入って次の曲まで繋ぐという流れが何度か繰り返された。
普段は指定席のある声優ライブによく行くので今回のようなオールスタンディングのライブとDJイベントが合わさったような構成は新鮮だ。
通常のアーティストなら衣装替えや演出準備の時間をバンド紹介やイメージムービーで繋ぐ事が多いので観客はクールダウンしやすいが、その時間がDJパフォーマンスになっているので休む暇がない!
最初から最後まで最高のテンションを維持したままアイちゃんの再登場を迎えることができる画期的なステージ構成だった。
どの曲も良かったが特に自分の中で印象的だったのは“miracle step”と“melty world”だ。
どちらも独特なダンスが特徴で、miracle stepは足を大きく振ってリズミカルなスッテップを踏む振り付けと後ろを向いて「もう良いかい? もう良いかい?」の歌詞に合わせてプイっとふり返る振り付けが思わずペンライトを握った腕が止まってしまうほどに可愛い!
あまりにも可愛いのでニコニコのタイムシフトでこの曲の所だけ何度も見直してしまったほどだ。
melty worldではスタイリッシュでカッコいいアイちゃんのダンスを見ることが出来た。
特にAメロの入りで少し跳ねてから拳を振り下ろすアクションのカッコよさは刺激的だった。ここにシビレたのは自分だけではなかったらしく、会場全体が音楽と完璧にマッチしたその振り付けにライブ中で一番の湧き上がりを見せていた。
当日を思い返してもニコニコのタイムシフトを見直しても文句なしの最高のライブだった!
Vtuberのライブイベントがリアルのアーティストと全く同じレベルで行われるようになるはまだ少し時間がかかるかもしれないが、今回のライブや過去のVRライブの事を考えるとVtuberのライブは独自の方向へ進化していける可能性を強く感じる。
例えば観客をスクリーンで囲って全方向をライブステージにしたり、同時に別々の会場でライブを行う事もVtuberなら可能だろう。
2018年の1年間だけでVtuberは信じられないほど進歩していたのできっと2019年も想像を超えた世界を見せてくれると僕は信じている。
そして、その先頭にはやっぱりキズナアイちゃんが居るはずだ。
これからもアイちゃんの切り開く新しい世界から目を離さず居たいと強く感じたライブだった。
ダンスミュージックってステキなんです。
— Kizuna AI@hello,2019‼︎ (@aichan_nel) December 30, 2018
みんなで手を上げて、歌って踊って笑顔になれる!
想像した最高の景色が本当に広がってました。
みんな、本当にありがとう!!!
でも、当然ながら!
まだまだ終わりません。
さぁ行こう、2019年!
そしてもっとその先へ!
これからもよろしくね!!! pic.twitter.com/NEszPFq2Tf